Eine kleine Spielzeugkiste

とりあえず、マンガのレビューや二次小説を書いていきたいと思います。

【はぴまり】二次小説(その4)

【重要なお知らせ】

ブログ開設して早々に恐縮ですが、ブログをお引越しさせていただきます。

http://ohisama-himawari.seesaa.net/

今後は上記のブログにて記事を書かせていただきますのでよろしくお願いいたしますm(__)m

(なお、こちらのブログで書いた過去の記事もすべて引っ越ししております)

 

 

 

 

(大好きなコミックス「はぴまり ~Happy Marriage!?~」(全10巻)のその後を二次小説で想像してみました。小説についての詳細はこちらをご覧ください。)


 

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その3からの続き)

冬の寒さがいよいよ鋭く肌を突き刺すようになってきた1月。

今日はお義父さんの命日だ。

先週末、三回忌の法要があるから参列しないかと相馬さんから連絡があったけれど北斗は断った。

間宮の親戚一同が集まる場所だもん、北斗が断っても仕方のないことだと思う。

けれど、やっぱり私はお義父さんにご挨拶したい。

お墓参りに行くことを北斗にも伝えようと思ったけれど、お正月休みも早々に切り上げるほど忙しそうだったから、私が北斗の分までお参りしてくることにした。

 

北斗のお母さんが眠るお墓と違って、間宮のお墓は都内でも有名なお寺の一角にある、それはもう立派なお墓だ。

法要が終わったばかりで、お花もたくさん供えられていたので、私が持ってきたささやかなお花は隅っこに置かせてもらうことにした。

(お義父さん…天国でお義母さんと仲良く暮らせていますか?

北斗は元気でやっています。お義母さんの姓に戻って地位も名誉もなくなりましたが、一から会社をおこして頑張っています。お義父さんならきっと北斗の成功を信じて応援してくれますよね…?)

 

千和…」

手を合わせていた私の後ろから大好きな人の声がして、私は驚いて振り向いた。

「北斗… 北斗も来たんだね」

「ああ。命日くらいはな…」

ビジネススーツのままの北斗は、私が置いた花の横に自分が持ってきた花束を無造作に置き、間宮の墓石をじっと見つめる。

そういえば、お義母さんのお墓参りのときも、北斗は手を合わせたりしない。

立ったままお墓をしばらく見つめて、さっと帰ってしまう。

きっと心の中ではお義母さんやお義父さんに語りかけているんだろうと思う。

 

「車で来たのか?」

「ううん。電車とバス乗り継いで来たの」

「身重で大変だったろ。家まで送る」

今来たばかりなのに、あっさりと北斗は踵を返す。

私は墓石に一礼して、慌てて北斗の後を追った。

 

車に乗るとしばらくして、北斗がぽつりと話し始めた。

「俺がまだガキの頃さ… 学校のテストで94点を取ったんだ。

満点はクラスに一人もいなくて、俺がトップだった。

嬉しくて親父にその答案を見せたんだが、親父は誉めるどころか2問間違えたことを責めた。

お前が将来行く世界では一つのミスも許されないんだぞ、ってさ」

「そうだったんだ…

私が知ってるお義父さんは優しそうな印象だけど」

「それは親父が歳を取ったせいだろ。とにかく俺に対しては厳しい親父だった。

"君は僕が嫌いなんだから僕を見返してみなよ"とも言われた。

俺はその後必死で勉強したけど、今思えば親父を見返してやるという気持ちと同時に、親父に認められたいっていう思いもあったんだろうな」

こんなことを北斗が話してくれることってほんとに珍しい。

今日がお義父さんの命日だっていうこともあるけど、子どもが生まれてくることで、お義父さんと自分の親子の絆を北斗自身思い返す機会ができたのかもしれない。

お義父さんの死後に血のつながりがなかったってわかったけれど、愛憎混じり合った二人の関係はまぎれもない親子だったものね。

 

「今日は… ありがとな。親父の墓参り」

「えっ、ううん。北斗の妻だもん。当然だよ」

運転する北斗の横顔を見つめる。

仕事の合間とはいえ、お墓参りをすませたせいか仕事中の厳しい顔つきではなく、家にいるときのような優しい顔に見える。

今ならあの話をしても大丈夫かな…

「あのね、北斗… 理さんのことなんだけど」

「理さん?こないだの話か?」

「うん… やっぱり、理さんご夫妻の気持ちを考えたら、間宮商事が北斗の会社の顧客になる話、受けてもいいんじゃないな」

おそるおそる言ってみたら、途端に北斗の顔つきが厳しくなった。ちょっと後悔…

でも、言い出した以上は私も後に引けない。

「理さん、自分のお母さんの代わりに北斗に償いができないかって一生懸命考えたんだと思う。

北斗がそれを拒否したら、理さん達はずっと罪悪感で苦しみ続けなきゃいけなくなるんだよ?」

「理さんが罪悪感を感じる必要も、俺に償いをする必要もまったくないと言ったはずだ」

「それはそうなんだけど!

理さんの気持ちとしてはそんな風に割り切れないの、北斗にだってわかるでしょ?」

「俺にはわからねえ。悪いがそんな感傷は持ち合わせていない」

やっぱり取りつく島がない。

「もぉ…北斗のわからずや!」

いつものように思わず感情的に北斗をなじってしまった。

「わからずやはおまえの方だろ?」

「なんで私がわからずやなのっ⁉︎」

「俺はビジネスの話に感傷は持ち込まないって言ってるんだ。

理さんの申し出を感傷で断ってるんじゃない。

間宮邸で話したとおり、今の俺の会社の規模じゃ間宮商事の仕事はさばききれない、それだけだ」

「それはどうにかならないの…?」

「間宮商事と間宮観光を顧客にできれば俺の会社にとってもでかいメリットになるのはわかってる。

だからこないだからちゃんと水面下で動いてる」

感情的になった私とは対照的に、北斗は淡々と話を続ける。

仕事の話をしている時の北斗の顔は、冷徹とも思えるくらい隙がなく、端正な顔立ちがより一層整って見える。

思わず見とれてしまっている自分に気がつき、私は慌てて北斗に尋ねた。

「じゃあ、近いうちに理さんからの申し出を受けられるってこと?」

「そうだな…間宮グループと提携できそうな有力な顧客企業の開拓も進めてはいるが、やっぱりウチの会社の人手を増やさないことには、間宮以外の仕事に対応しきれなくなる」

北斗はしばらく沈黙して何か考えているようだったけど、チラリと私を見てこう尋ねてきた。

「おまえ、八神とまだ連絡とってるのか?」

「なっ、なによ急に…  最近は飲みに行ったりしてないよ!」

「そうじゃねえよ。連絡が取れるかって聞いてるんだ」

「連絡、取れると思うけど」

「じゃあ今度八神を飲みに誘え」

「は?いきなりなんで??

私が八神君と飲みに行くの、あんなに嫌そうにしてたじゃない」

「おまえ、ほんとに鈍いなぁ。

八神を俺の会社に引き抜こうとしてるんだよ」

私の理解力のなさに、北斗の顔がやれやれと言っている。

「えぇ⁉︎八神君を、北斗の会社に⁉︎」

突然の話でびっくり!

「おまえが八神を新人研修で教えてた頃、あいつは素直で飲み込みが早い、良い人材だって言ってたろ。

八神がおまえにちょっかい出すようになってから俺もあいつがどんな奴か気になって、直属の上司から奴の仕事ぶりを時々聞いたりしていたんだが、上司からも高評価でさ」

…ちょっかい出されたのは一度だけなんですけどね///

「あいつなら間宮商事の内情もある程度知ってるはずだし、人当たりもいいから渉外に使えそうだと思ったんだよ」

「そっかー‼︎北斗の会社に転職できれば、八神君東北支社から戻ってこれるしね!

前に八神君が東京に出張で来て飲んだ時に、彼女と遠恋してるし早く東京に戻りたいって愚痴こぼしてたんだ」

北斗はそれを聞いて、気まずそうに口元に手をもっていった。

「あいつが東北に行ったの、元はと言えばおまえが俺についた嘘のせいだったんだぞ…」

「え??どういうこと???」

「おまえ、前に俺の海外出張中に八神と浮気したって嘘ついただろ」

「ちょっと待って!まさか北斗、それを間に受けて…

北斗が八神君を飛ばしたってことー⁉︎」

単なる異動だと思ってたのに、それはショック…

八神君ほんとゴメン‼︎てゆーか、北斗ひどすぎ‼︎

「ま、俺が間宮商事辞めた後も未だに東北に残ってるってことは、あっちで重宝されてるってことだと思うけどな。

俺も少しは罪悪感感じてるから、この機会に東京に戻してやろうと思って」

そんなことケロッとして言っちゃうあたり、北斗が罪悪感なんて感じてないの見え見えなんですけどー(苦笑)

でも、器用でそつなく仕事をこなせる八神君がスタッフとして入ってくれたら、きっと即戦力として役に立つと思う。

 

「…なんだよ。さっきから俺の顔見てニヤニヤして///」

北斗がむっつりと照れ臭そうに言う。

「今ね、なんか嬉しいなって思ったんだ。

北斗も私も、一度はいろんなもの全部捨てて、夫婦二人きりで再出発したでしょ?

でも、大切な人たちとの縁は切れてなかった。

おじいさま、相馬さん、理さん夫婦。

桜庭さんや朝比奈さん。

八神君も…」

「あと、片桐先輩もな」

私が片桐先生のこと苦手にしてるの知ってるくせに、意地悪な北斗はわざと名前を出す。

「片桐先生、突然ふらーってうちに遊びに来るの、北斗から言ってやめてもらってよぅ。北斗がいない時でもちゃっかりコーヒー飲んでくし、いつの間にかあの人のペースに巻き込まれて、いろんな本音言わされちゃうし…」

「本音って、俺に対する愚痴だろ?

今度片桐先輩に聞き出さなきゃな」

「それだけはやめてー!」

慌てふためく私を見て、クククと北斗が笑う。

口元に笑みの余韻を残しながら、北斗が穏やかに言った。

「おまえのおかげだよ。

おまえが俺と結婚してくれたから、他人を信用してもいいんだって思えるようになったし、周りに頼ったりできるようになった」

「北斗…」

「俺は親父から、自分以外の人間を信じるなと教えられきた。人間関係も、ビジネスの損得勘定の上でしか成り立っていなかった。

おまえと出会う以前の俺のままで間宮家を放り出されていたら、今頃俺には何も残っていなかっただろうな…」

苦笑いする北斗の膝にそっと手を置いて私は言った。

「北斗は根っこの部分は変わっていないと思うよ。

お義母さんと二人で幸せに暮らしてたときのまま。

お義父さんに認めてほしくて頑張っていた頃のまま。

北斗は自分が思ってるよりずっと優しくて純粋な人だよ。

だから私、契約結婚でも北斗のこと好きになれたんだもん」

「そういえば、前に美咲にも似たようなこと言われたな…」

「えっ?」

「いや、なんでもない」

 

それきりしばらく会話は途切れたけれど、私は北斗のさっきの言葉をかみしめていた。

北斗は優しい人。

でも、間宮のトップに立つという目的達成のために、その優しさを押し殺して冷徹でいようと努めていたんだと思う。

私と結婚したことで北斗の心を解放させることができたのなら、私が北斗のお嫁さんになったのにはやっぱり意味があったってことなのかな…

子どもが生まれて家族が増えても、結婚してよかった、家族がいてよかったって北斗に思ってもらえるように頑張ろう。

 

私の考えていることが伝わったのか、北斗は自分の膝の上に置かれていた私の手を取って口元へ持っていくと、

「これからも俺をよろしく頼むよ、奥さん」と微笑みながら、手の甲に優しくキスをしてくれた。

 

(その5へ続く)