Eine kleine Spielzeugkiste

とりあえず、マンガのレビューや二次小説を書いていきたいと思います。

【はぴまり】二次小説(その1)

【重要なお知らせ】

ブログ開設して早々に恐縮ですが、ブログをお引越しさせていただきます。

http://ohisama-himawari.seesaa.net/

今後は上記のブログにて記事を書かせていただきますのでよろしくお願いいたしますm(__)m

(なお、こちらのブログで書いた過去の記事もすべて引っ越ししております)

 

 

 

(大好きなコミックス「はぴまり ~Happy Marriage!?~」(全10巻)のその後を二次小説で想像してみました。小説についての詳細はこちらをご覧ください。)


 

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こんにちは。

小鳥遊(たかなし)千和から結婚して間宮千和となり、離婚して小鳥遊千和に戻った後に同じ旦那様と再婚した三浦千和です。

や、ややこしい…

同じ旦那様ともう一度結婚したのに姓が違うのにはいろいろとわけがありますが…

とにかく今、私は旦那様である三浦北斗の元実家、間宮本家の玄関前に再び立っています。

 

ここに来たのは、北斗のお母さんを死なせたのが佳代伯母様だったことがわかって以来、約1年ぶりーーー。

その1年の間に、私たちは再び入籍し、結婚式を挙げ、北斗が事業を始め、家を建て、妊娠し…といろんなことがあった。

もっとも、私たちは出逢ったときからいろんなことがありすぎて、出産を間近に控えた最近になってようやく落ち着いた日常を送り始めたところだったんだけど…

そんなときに、突然間宮のおじいさまから北斗と私が呼び出されたのだ。

もう二度と敷居をまたぐことはないと思っていた間宮邸。

ここに来るたびに、北斗の元・親戚から冷たい視線や暴言を浴びせられてきたことを思い出すと、せっかく訪れた平穏な日常に波風が立つんじゃないかと不安になる。

 

けれど、間宮家専属秘書の相馬さんから連絡のあった日、北斗に私のそんな不安を口にすると、北斗は軽く笑ってこう言った。

「考えすぎだ。俺たちはもう間宮の人間じゃない。間宮グループの経営に口を出す権利もない俺たちが行ったところで、もう誰も攻撃してくるはずがないだろ。

それに、相馬が今回の件は親戚連中には内密にしていると言っていた。

今回の呼び出しは、じじいがお前に会いたくなったっていう程度の用事だろ。」

「そ、そうかな…」

 

でも、私には腑に落ちないところがある。

おじいさまは北斗が間宮家から去った後も、時々私たちの様子を見に、相馬さんを連れて私の実家や新居を訪ねて来てくれた。

妊娠がわかって報告してからは、それはもう実のひ孫を待ち望むかのような喜びようで、私の体調をすごく気遣ってくれていた。

そんなおじいさまが、私たちをわざわざ嫌な思い出ばかりが残る本家に呼び出すのにはきっと何か理由があるんじゃないかな…

 

ランスロット!トリスタン!元気そうだな〜

ははは!そんなに顔を舐めまわすなよ」

そんな緊張と不安を抱えた私をよそに、北斗は間宮家で飼われているドーベルマン二匹と久しぶりの再会を喜んでじゃれあっている。

そりゃあ北斗にすごく懐いていた2匹が北斗との再会を喜ぶのはわかるけど、北斗は本家の敷居をまたぐことに抵抗はないのかなーーー

 

「お待たせいたしました。どうぞこちらに」

お仕えの人に案内されて、私たちは久しぶりにおじいさまの書斎に足を運んだ。

「ご無沙汰しております…」そう言って書斎に入った私たちの前に、なつかしい人物が立っていた。

「北斗くん…  千和さん…」

「あっ…! 理(さとる)さん! 沙緒里さん!」

私は思わず駆け寄り、涙ぐむ沙緒里さんの手をとった。

「沙緒里さん… 私ずっとお二人のことが気になっていて…」

千和さん…北斗さん… 本当にお二人にはなんとお詫びしてよいやら」

沙緒里さんの隣にいた理さんが、青ざめた顔で突然ひざまづいた。

「北斗くん…! 君にはずっとこうして謝りたかった…

僕の母が犯した罪は償っても償いきれないものだ。

僕がこんなことをしても君の傷が癒えるわけではないこともわかっているが…」

「頭をあげてください、理さん」

北斗が理さんのそばに歩み寄る。

かつては会長候補の座を争っていた有能な二人。

理さん夫妻は北斗の従兄弟の中で唯一北斗に優しく接してくれる、人柄の良いお二人だった。

北斗もそれはわかっていたのだけれど、後継者争いのライバルという立場から理さん夫妻への親愛の情は極力もたないようにしてきたはずだった。

けれども、理さんの母親が自分の母親を死に追いやった張本人だった事実がわかったとき、北斗は理さん夫妻のことを気遣い、そのことを公にしないつもりだった。

それは北斗が理さん夫妻へ見せた初めての優しさだった。

結果的に伯母様本人が自白し、私たちはすぐにその場を立ち去ってしまったので、私は理さん夫妻がその後どうなっていたかずっと気になっていた。

 

「俺は今、千和と幸せに暮らせています。母が亡くなり、間宮に引き取られたから千和と出会えた。そして、間宮の籍から抜けたから今を平穏に暮らせているんです。

理さんが謝らなければならないことは何もない」

「けれど、僕の母が犯した罪は君の人生を…」

うなだれたまま頭を挙げない理さんを、おじいさまが優しく促した。

「理、今日は北斗に大事な話があったんじゃろう。

そのために身重の千和さんまで連れてわざわざ来てもらったんじゃ。

さっそくその話をしたらどうかの。」

理さんはなおも申し訳なさそうに立ち上がった。そして、私たちをおじいさまの机の前の応接テーブルに案内してこう切り出した。

 

「実は、おじいさまから北斗くんが新事業を始めたと聞いて…

お詫びとか償いというのもあまりに傲慢なのは重々承知なんだが、僕にも何か協力できることがあるんじゃないかと思って、おじいさまに頼んで君に来てもらったんです」

「俺の会社はまだ立ち上げたばかりで規模も小さい。間宮の企業を相手にできるような力はまだありませんよ。お気持ちだけで」

「僕は今、君が経営していた間宮商事と間宮観光を引き継いでいる。君の会社は経営コンサルタント事業だけじゃなく、君の人脈を生かして様々な企業の橋渡しをする企業コーディネート事業も行うと聞いたよ。

間宮グループ全体の権限は現会長の正嗣叔父さんが持っているが、僕の経営している会社なら、僕の判断で君の会社と提携することができる。

何より、君の経営手腕と人脈で僕に力を貸してほしいんです」

 

この場で理さん夫妻と再会できたのも驚きだったのに、理さんが北斗と組みたいという話は、詳しいことがわからない私でも想定外の話で驚いた。

話を聞きながら、北斗の横顔をちらっとのぞくと、北斗は顔色ひとつ変えず、淡々と理さんの話を聞いていた。

「大企業の間宮商事と組めることは、うちにとっても大きなメリットがありますが…

やはりお断りします。現状の規模ではとてもさばききれない」

「間宮商事の一部門からでもいい。君の会社と仕事ができれば…」

話を聞いていたおじいさまが優しく間に入った。

「北斗。理の気持ちもわかってやっておくれ。

お前はもう間宮とは関わりをもちたくないだろうが…」

「おじいさま。俺は私情だけで断っているわけではありませんよ。

それにさっきも言ったように、俺が理さんに償いを受けるいわれはまったくない。

お話はありがたいが、今日はこれで」

そう言うと、北斗は出されたコーヒーに手をつけないままさっと立ち、

千和、行くぞ」と私を促した。

「う、うん…」

理さんは取りつく島のない北斗に何も言えずにうなだれている。

その隣で涙ぐみながらうつむく沙緒里さん。

私は沙緒里さんともっといろいろ話をしたかったけれど、慌てて席を立った。

「失礼します」

ぺこりと頭を下げると、名残り惜しそうにおじいさまが言った。

千和さん、くれぐれも体を大切にして元気な子を産んでおくれ。

北斗、お前の子が生まれたら、わしにもひ孫の顔を見せておくれ…」

北斗は振り返りもせず、事務的な口調で

「またご報告します」とだけ言って書斎をあとにした。

 

 

「理さんの話、本当に断っちゃうの…?」

帰りの車の中で、私は北斗にそう尋ねた。

「言ったろう。理さんに償いのような施しを受ける義理はない」

「で、でも、間宮商事が顧客になれば、北斗の会社も安泰だと思うんだけど」

「おまえ、俺の能力を信用してねえだろ。

間宮と組まなくたって、俺の会社は力のある企業が既に何社も顧客になってんだよ。」

運転しながらの横顔でもわかる、明らかに不機嫌な北斗。

違う…本当は北斗の会社を心配してるんじゃない。だって、北斗の経営手腕は間近で見てきてわかってるつもりだもの。

私としては、北斗の会社を援助することで理さんの心が少しでも軽くなるならって思ったの。

これまで北斗や私にいつも優しく接してくれた理さん夫妻の辛そうな姿は、見ていてこちらも辛くなる。

いくら理さんが会長の後継者になるために伯母さまが仕組んだこととはいえ、理さん達が罪悪感で苦しむ必要なんてないのに…

北斗だって、理さんが罪悪感を感じる必要ないって言ってた。

そう思うなら、理さん達の心を軽くしてあげた方がいいと思ったのに…

「北斗、間宮家の人にはやっぱり冷たいんだね。

これまでのこと考えたら北斗が冷たくなるのもわかるんだけど、でも理さんは…」

「黙れ。この話はこれで終わりだ」

不機嫌オーラから怒りオーラに変わった!

北斗は横目でギロリと私を睨み、凄んでくる。

「これ以上話を続けるなら犯すぞ」

「お、おか…⁉︎」

「早産になりたくなければ俺に反論するな」

出産間近の奥さんに対してどんな脅迫してんのよぅ〜⁉︎

北斗お得意の脅し顔にひるむやら、呆れるやらで口をぱくぱくさせてると、私の反応を見てニヤリと笑った北斗が優しい口調でこう言った。

「そういやコーヒー飲み損ねたな。

どっかでお茶してデートでもしていこうぜ、奥さん」

北斗の愛車のランボルギーニのエンジン音が、私の代わりにYESの返事を出していた。

 

(その2へ続く)